希望の魔法使い
体育館からぞろぞろと戻ってきた生徒達。
各々自分の席に着く。
場所は3階、桜クラス。
「えーっとま、一応…2年桜クラス担任の伊集院渚だ、よろしく」
ぐるぐるメガネを少しくいっと上げ、お前らの自己紹介は後日でもいいだろ…それより言われたことやんなきゃ減給される、とぶつぶつ言うそのセリフはまさに反面教師。
「さっき出た召喚悪魔だが…学園側で色々調べるから詳しくは明日だな」
半壊してる女子寮も今学園長が直しに行ってるから女子は安心して帰るように、などと言いながら話を続ける。
「まぁ、2年生としての登校初日という訳でがっつり授業はやらないが基礎を少し話そうと思う」
そんな渚先生の話は耳に入っていないのか美月は先程の体育館での出来事を思い出す。
(…あんな沢山の生徒がいる前で学園に入学する資格ないとか普通言いますかね)
美月は腑に落ちないという表情をしながら、黒板にチョークを滑らせる渚先生を見た。
「まず始めに…毎年やらかす生徒のために忠告」
カンッと音を立てて黒板に大きく忠告の文字を書いた。
「…分かっているとは思うがお前達の持っているその杖はあくまでも補助に過ぎない。使う魔法の威力を高めてくれるだけであって自分自身の魔力が高まった訳じゃない」
教壇の上を行ったり来たりしながら説明を続ける。
「つまり、杖の仕様が禁止の魔法テストや体育祭、いわば成績をつける行事はほとんど杖を使えない。杖を使えるからと自身の魔力を過信すると成績とれなくて留年まっしぐらだぞ、という忠告だ」
(私は、どうすればいいんだろう)
そんな事をぼんやり思っている美月をちらりと見た渚先生は、んじゃ次に魔法の種類についてだな、と言うと再びチョークを持ち黒板に向き直った。
「えー魔法と言うのは主に3パターンに分けられる…原則魔法、基礎魔法、応用魔法だ」
マスクをしているのによく通る声、聞いた事あるような、落ち着くその声を聞くと先程の怒りも少し薄れる気がした。
「原則魔法は全部で8原則。火水風雷光闇氷命の8つがあるのはみんな知ってるな」
そう、魔法使いとして生まれたならその瞬間から知るはずの内容。
「で、この原則魔法を掛け合わせて剣魔法《ソード魔法》と盾魔法《シールド魔法》を使う、杖の宝石が光る色は原則魔法の色と同じだ」
ま、いつしか実技の授業でやるさ、と丸投げ。
「んで次に…禁忌の魔法《タブーマジック》、偉大な魔法《グレートマジック》、自分の魔法《オンリーマジック》…まとめて応用魔法と言われている」
さっき体育館で見たしわかるだろ、と丸投げ。
「まぁ自分の魔法《オンリーマジック》はわかってるとは思うが…自分自身にしか使えない、生まれながらに持っている唯一無二の魔法…いらない魔法なんてないからな、大事にするように」
そう言った直後、タイミングよくチャイムが鳴った。
渚先生が美月に声をかける。
「美月、職員室は1階にあるから…って昨日朱音に案内して貰ってたからわかるか」
「あっはい」
じゃ、みんなも何か困ったことあれば職員室まで。
はい、解散また明日と言うと渚先生は白衣を翻し教室を出て行った。