イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
まだ信じられない。
この人が、お試しとはいえ、わたしの“彼氏”?
「ど、どうかした? 何かあったの?」
なんとなく直視できなくて、視線を落としてしまったんだけど……
「こっち見ろ」
近寄ってきた彼の手に無理やり顎を拘束され、上向かされた。
「な、なにっ?」
「平気か? 何もされてないか?」
そのまま食い入るように見つめてくるから、ものすごく落ち着かない。
「……なに、よ? 何かって?」
ほんとにこの切れ長の瞳、目力半端ないんだよね。
まるで心まで丸裸にされたみたいで……
居たたまれずに掴まれた顎を無理やり引いたら、
我に返ったらしい彼がようやく解放してくれて、ホッとした。
「さっき出先から戻って……で、課長から聞いた。うちのフロアで、お前が嫌な思いしたって」
「あぁ……」
名刺のことだ。
もしかして、心配してくれたの?
それは、嬉しいけど……
「別に、大丈夫だったよ? 呼んだ声が小さくて聞こえなかったのかも」