イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

「用事がそれだけなら、もう戻るね」

拍子抜けしながら、彼の横を通り抜けようとしたところへ。

「あ、ちょい待ち」
がしっと腕が掴まれた。

「何?」
「これ、美弥子が持ってて」

ポトン。
手の上に、金属製の何かが落ちる感触。

ヒンヤリ、小さな……四角い……

手の平を開いて、その正体がわかった。
「ライター?」

「オレ、そのジッポーでしか吸わないから。禁煙の証明」
「へぇ……」

愛用品なんだろう。
くすんだシルバーのフォルムは傷だらけで、よく使い込まれてることが伝わってくる。
派手な絵柄の類はないんだな、とひっくり返すと……
下の方に一言だけ、シンプルな文字が刻まれていた――“with love”と。

まさか、元カノからのプレゼントだとか?
ありうるな、この男の場合。

「これだけで信じろって言うの?」

モヤッとしたものを感じた瞬間、イジワルな言葉が飛び出してしまった。

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