イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「信じられない?」
「だって、吸おうと思えばチャンスはあるでしょ」
たしかに今朝、エントランスの喫煙スペースに彼の姿はなかったけど。
営業なんだから、外回り中に他の喫煙所を探すことだってできるよね。
「そうか、それだけじゃダメか」
残念そうな、大きなため息。
困ったように項垂れる姿に、ちょっとイジメすぎちゃったかな、とあっという間に後悔した。
だから。
大丈夫信じてるよってフォローしようと思ったんだけど……
「じゃあ仕方ないな」
ごく静かに言った彼は――黒い笑みを浮かべた。
そしてわたしへ向かって、おもむろに両腕を広げる。
「来いよ」
……は?
これは、この腕は、えーと、一体何の真似かな?
「信じてないんだろ? オレがどこかで吸って来たかもって、疑ってるんだろ?」
「えっと、そのそれは……」
「だったら、自分で確かめてみろよ。オレからタバコの臭いがするかどうか」
「っ……」
それってつまり。
わたしに、嗅いでチェックしろってこと? これ以上近寄って?
「や、あの、いいです。うん。充分信じてるからっ」
ブンブン両手を振って、懸命に拒否するも。
「いやいや、それじゃオレの気が済まない」と切れ長の瞳はニヤつくばかり。