イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「ちょっ、坂田くんっ! ふ、ふざけないでよっ」
長い腕が背中と腰に回され、身体が密着し……バクバクと鼓動が暴れ出す。
「証明してるだけ、ただの禁煙チェック」
こここれのどこが証明よっ?
完全に抱きしめられてるって態勢じゃないっ!
なんとか離れようと足掻いてみるものの、彼はがっちりわたしをホールドしたまま。逃がす気なんてないようだった。
「ほら、とっとと確かめろ。タバコの臭いするか?」
さらにぐいっと胸元に頬が押し付けられてしまう。
ドクンッドクンッドクンッ……
ダイレクトに耳に響いてくる、彼の鼓動。
わたしのそれよりも強く、速く脈打ってる気がして、ハテナが浮かぶ。
緊張してるの? 彼が?
いやいや、まさか! ありえないよね。
浮かんだ想像をすぐに打ち消して、とにかく早く放してもらおうと、嗅覚に集中した。
「……香水、つけてる?」
以前も、それほどタバコ臭いってわけじゃなかったけど。
それでもやっぱり、喫煙者だってことはわかる匂いだった。
今は、……ほんとだ、全然違う。
「いや、何も。つけたら誤魔化してるみたいだろ」