イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
じゃあこれは、彼自身の匂いなのか。
くん、ともう一度深く息を吸い込む。
なんだろう。
なんか、落ち着く匂いだ。
こうして包み込まれていると、陽だまりの中にいるみたいで、なんだか妙に安心するっていうか……
ん?
おいおい、わたしは変態かっ。
いつの間にか、うっとり半目でクンクンしていた自分に気づいて。
赤面した顔を見られないよう、うつむきながら身体を放そうとした時――
「これでも足りなきゃ――最後は……そうだな、直接的に確かめるしかないな」
「へ? ちょ、くせつ……え? え?」
直接? タバコ臭を、って?
首を傾げるわたしの唇へ、彼の親指がつっ、と触れた。
「味わってみる?」
どこか危うい熱を孕んだ官能的な眼差しが、そこに注がれ――ゾクゾクって、電流が体を駆け抜けるような心地がした。
ま、まさか。
直接って、味わうって……ききき、キスっ!?
「きゃあっ」
悲鳴を上げて彼を突き飛ばすと、拘束はあっさり解けた。
「あははははっ……すげえ焦りっぷり。ほんと、揶揄いがいがあるよな」
「ううっ坂田くんのバカぁッ!」