イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

「身分証明書の提示をお願いします」

新橋駅から徒歩10分のビジネスホテル。知り合いに会わないようにと選んだ会場は思いのほか遠くて、腕時計とにらめっこしながら焦っちゃったけど。

なんとか開始時間前に滑り込めて、胸をなでおろした。

免許証を出して名前を書き込み、受付を済ませる。

テーブル上の名簿にチラッと目を走らせると、「男性、所属部署まで確認」と注意を促す文字が見えて、小さくガッツポーズ。

街コンと迷った末、このイベントを選んだ理由は、コレ。
男性側の参加条件が、公務員限定だから。

公務員といっても、キャリア官僚なんてお呼びじゃない。
最低限の収入があるなら、区役所の窓際族で充分だ。

家族と過ごす十分な時間が、きっとあるはずだから。

「こちらが中村さんの本日の番号になります。同じ番号の椅子にお座りいただいて、プロフィールカードをご記入ください」

スタッフから渡されたカードを持って会場へ入ると、そこは広い会議室のような部屋だった。

ぐるりと壁沿いに椅子が並んでいて、8割がたが埋まってる。
ただし、みんな自分のプロフィールを書き込むことに熱中しているらしく、誰もしゃべらない。

なんとなく居心地の悪い沈黙を横切って、言われた通り、自分の番号の椅子に腰を下ろした。

どうやら、男女で交互の席になるように、番号が振り分けられてるみたい。

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