イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

耳に届いたのは、初めて聞く冷ややかな声で。
一瞬、もう一人別の人がいたのかと思った。

「なんだ、クリスマスは嫌いか?」
「そうですね。だってしんどいだけでしょ、クリスマスなんて」

間違いない、坂田くんだ。
確かに本人なのに、どうしてこんなに、別人みたいだと感じるんだろう?

「どこもかしこも、浮かれた奴らでいっぱいで鬱陶しいし、プレゼントは強請られるし。面倒くさいイベントとしか思えないですね」

バッサリと切って捨てるような言葉。
希望も明るさも何もない、蔑むような言葉。

「なるほど、モテる男は大変だな」
「課長ほどじゃありませんよ」

再び靴音が響き、それはそのまま遠ざかり。
つられるように、浮かれていた気分が凪いでいく。


――まったく、どこもかしこも人でいっぱいだ。なんでクリスマスなんてイベントがあるんだろうな。



「……さん、中村さん?」

ハッと振り返ると、三井さんが怪訝そうにこっちを見つめていた。
「工程表、チェックしていただけますか?」

ノートパソコンの画面を示されて、「すみません!」って駆け寄って。
一瞬だけ振り返ると……


自動ドアの向こう、ぐんぐん小さくなっていく背中があった。

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