イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
イルミネーションで華麗な変身を遂げた新宿の街、流れるクリスマスソング……歩いてるだけで、この時期特有のクリスマスムードが伝わってきて。
普段ならすぐにテンション、アガっちゃうんだけどな。
今日は無理だな、と自嘲気味にこぼして。
トレンチコートの襟元を掻き合わせるようにして、とぼとぼと足を運ぶ。
耳の奥で何度も木霊してるのは、さっきの台詞だ。
――だってしんどいだけでしょ、クリスマスなんて。
坂田くん、嫌いなんだクリスマス。
なんだ、知らなかったなって、唇をきゅっと結ぶ。
そりゃそうよね。
彼くらいモテる人なら、うんざりするくらいいろんな美女と過ごしてきたんだろうし。
プレゼントの準備だって大変だろうし。
楽しい思い出ばかり、ってわけにもいかないんだろうな。
うん。
わたしだって、別に大好きってわけじゃない。
クリスチャンでもないしね。
ずっとクリぼっちだし、どちらかっていうと苦手で。
うん……そうだよ。
言い聞かせれば言い聞かせるほど、
気持ちがシンと凍えそうになっていくのは、このところめっきり温度を下げた、外気のせいばかりじゃない。
――ほんとにめんどくさいわ、クリスマスなんて。
見上げた黒い夜空に揺らめき浮かんで、消えたのは。
もうだいぶ会っていない――両親の顔だった。