イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
ハッと気づくと。
テイクアウト用の紙コップが手の中から零れ落ち、地面に茶色い染みを作っていた。
強い木枯らしが頬をなぶっていき、ここが屋外だって一気に覚醒する。そこは会社からほど近い、西新宿にある公園で……
そうだ。
今日のランチはどうしても一人になりたくて、梓沙さんたちに断って、出てきちゃったんだった。
こんな拭きっ晒しで白昼夢とか、何やってるんだろう。
見渡せば、同じくランチ中の会社員らしき姿がちらほら。
まぁ11月半ばにしては、日差しは温かいからな。
無意識に引き寄せた傍らのビニール袋には、未開封のサンドイッチ。
でも全く食欲はない。
時間ももうないし……今日の夕食にすればいっか。
口の中でつぶやいてから、そこが妙にざらついているような気がして顔をしかめた。
舌の上に残るのは――
『ちょっとだけ、ツリー見てほしいな』
言えなかった、あの言葉。
小さな喉の奥に飲み込んだ、あの言葉、かもしれない。
苦い過去が蘇ってきて、小さく頭を振った。