イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
つぶやいた声に、男が反応した。
不快そうにムッと唇を尖らせる。
「まだあいつの名前、呼ぶんだ?」
ぎゅうっとニット越し、両胸に爪を立てられて、痛みに身体が跳ねた。
それでも悲鳴を上げまいと唇を引き結ぶわたしの耳に、舌打ちが聞こえた。
「なんか、腹立つね」
怒らせちゃダメだ。
ハッと気づいて、縋る様に目だけをそちらへ動かした。
「約束してください。お願いだから、あの写真のことは……」
「わかってるよ。君が言うことを聞くなら、データは渡す。あいつの秘密については、口を噤んでおくよ」
よかった――と、息を吐く。
これで坂田くんを守ることができる。
わたしさえ、我慢すれば。
「そんなに大事? あいつのこと。自分のカラダ、犠牲にしちゃうくらい? ムカつくなァ」
忌々しそうに言い放った男は、ニットを力任せに押し上げ……露わになったブラの谷間に顔をうずめた。
素肌に触れる生温かいその息から逃れようと、きつく瞼を下ろした。
その裏に、大切な人を思い描く。