イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
居酒屋の広い店内で、お手洗いに立って迷子になっちゃって。
ウロウロしてて、廊下に座り込む坂田くんを見つけたんだ。
――坂田くん?
――おー中村。
眠そうにとろんとまぶたが落ちかかった切れ長の瞳は、もうめちゃくちゃ色っぽい。
ドギマギしながら近づいて……ハッとした。
――どうしたの、顔色悪いよ。気分よくないの?
――んー……大丈夫、ちょっと酔っただけ。
お酒強そうなのに、と目を丸くするわたしに、坂田くんはきまり悪そうに頬をゆがめた。
――実はさ、あんま酒、得意じゃないんだ。
――そうなの? 全然わからなかった。
――いつもは周りに飲ませて、誤魔化してるだけ。お店の子に頼んで、薄めにしてもらったり。あ、これはここだけの秘密な? オレと中村だけの。
――わ、わかった。
――情けねえな。もっと頑張って、飲めるようにならないと。接待も増えるし。酒に飲まれる営業マンなんて、シャレになんねえ。
「……の、あのぅ! 大丈夫ですか?」
ハッと顔をあげると、怪訝そうに眉を寄せた見知らぬ男性が、わたしを覗き込んでいた。