イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
ぼんやりと、白い天井を見上げていたわたしは、いい加減戻らなきゃと体を起こした。
ジンジンと疼く唇に、指先で触れる。
腫れてないといいけど。
立ち上がろうとして、くらりとよろめき――ベッドサイドに崩れ落ちる。
頬もまだ熱っぽい。
全部全部、あのキスのせいだ。
少し前に坂田くんが消えたドアを睨んで悪態をついて。
去り際に彼が残した台詞を反芻した。
――絶対、認めねえから。トライアル終了まで、お前はオレのものだ。
どうして?
周りにたくさんいるじゃない。
あなたに相応しい女性が。
どうして……
――どんな理由があっても、絶対に手放してやらない。
突き放すような口調が、まだ耳の奥にこびりついてる。
さっぱりわからないよ。
どうしてわたしみたいな平凡女子に、そんなにこだわるのか。
わたしなんかの、何が気に入ったんだろう?
全然わからないけど……
ただ一つ、はっきりしていること、それは――トライアルを途中で終わらせるのは、どうやらとても難しいってことだった。