イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「あぁそれからこれも、誤解してるみたいだから言っとかないとな」
「ご、誤解……?」
「さっき、まるで美弥子がオレを誑かした、みたいな言い方してたけど、逆だから。必死になって口説いてるのは、オレの方」
え? はっ!?
坂田くん? 何を言うのよ、こんなとこで!
狼狽えるわたしを切れ長の瞳はまっすぐ見つめ、放さない。
「夢中になってるのは、オレの方なんだよ。彼女との時間を犠牲にするくらいなら、出世なんてクソくらえ、って思うくらいに」
「なっ」
なんで、そんなこと言うの……?
「西谷が、わざとこんな騒動を起こしたとは思いたくないし、今ここでそれを言い争うつもりもない。ただ、これだけは言っとく。今度また、彼女がお前絡みのトラブルに巻き込まれることがあれば、それはオレへの宣戦布告だとみなすから、覚悟しといて」
か、……覚悟しとけ?
そんな物騒なこと、言っちゃっていいの?
心配になるくらいきっぱり言い切った坂田くんを睨んでいた西谷さんは、ふっくらした唇をきつく結び、そして勢いよく身を翻す。
カツンっ!
甲高いヒールの音だけを残して、あっという間にその姿はドアの向こうへ消えていった。