イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

「このたびは、大変お騒がせしました。後日改めて、上司と謝罪に伺わせていただきますので」

坂田くんからもう一度、礼儀正しく頭を下げられて。
もううっとり、「いえいえ、まぁそんな」って頬を染めちゃってる多恵さん。
おじさんも、「ほぉお、しっかりしたもんだ」、なんて感心しきり。

さすが人たらしだ。

若干呆れ気味で眺めてから、わたしの方もお礼を言わなきゃって気がついた。

どうやら西谷さんに連れてこられた、ってわけじゃないみたいだから、このタイミングの良さにはハテナがつくけど。
助かったことは事実だもんね。


「あの、坂田くん、いろいろありっ……っへくしゅっ! くしゅんっ!」


ひぃいいいーっ!

な、なんでいきなり、そうなる!
恥ずかしくて泣きそうになりながら、赤い頬を押さえ、ガバッと視線を落とした、ら。

カツン……

伏せた視界に、大きな革靴が映りこんだ。


次の瞬間――ふわっ。

馴染んだぬくもりと匂いに包まれる。
この、手触りは……

坂田くんのジャケットだ。

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