イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
10. 2人きりの夜
気詰まりな道中になるんじゃないかと想像していたわたしの心配は杞憂だった。
車の中で道々、坂田くんがどうしてあそこに駆けつけることができたのか、説明してくれたから。
それによると――
わたしからのトライアル中止宣言に納得できなかった彼は、仕事終わりのわたしを待ち伏せ(!)するつもりだったそうだ。
それで総務課へ向かったところ、不在。
梓沙さんからわたしが厄介ごとに巻き込まれたようだと聞かされ、帰宅しようとしていた西谷さんをギリギリ捕まえて。
なんの報告もなく帰る気満々の様子から、悟ったのだという。
これは、彼女の作為的なトラブルだと。
「今までも、あいつの言動、何度か問題視されたんだけど。立ち回るのがうまいんだな、なんのかんのと見逃されてきた部分があって」
うん。
それはなんとなくわかる。
あの可愛い顔で「以後気を付けます」って言われたら、すぐ許しちゃいそう。
「でも今回はやりすぎ。課長に報告して、お前の上司にも謝罪に行くから」
「うちは別にいいよ。多恵さんの方だけ、謝ってくれたらそれで」
契約解除、なんて脅されたんだもん。
彼女には謝罪を受ける権利がある。
警備室には、今度差し入れでもしておこう。
そんなことを考えている間に、車は減速。
視線をあげると、見慣れた風景……わたしのアパート前だった。