イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「えと、今日は本当にありがとう。それと、送ってくれて助かった。ジャケット、クリーニングして返すね」
早くこの場から逃げ出したいのか、もっと彼と話したいのか。
自分でもわからないまま、のろのろシートベルトを外しながら言えば。
「別にいいって。そのまま返してくれれば」、と彼が手を出してくる。
「そういうわけにはいかないよ。汚れちゃったし、匂いとか……」
その手を押しのけようとして――指先が触れ合った。
トクン。
とっさに引こうとした手を、掴まれて。
「っ……」
「美弥子」
暗がりの中から、熱っぽい視線が飛ぶ。
ドクンドクンドクン……
一気に騒ぎ出す鼓動。
それは、夜の静寂の中、彼に聞こえやしないかと心配になるほどで――……
ぐううぅうううう……