イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
だって彼は、営業部のエース。
わたしとは違う世界を見ている人だもの。
「に、西谷さんの言う通りだと思う」
「西谷?」
揺れ動く気持ちを振り切る様に、彼の手から自分の手を引き抜いて、胸へ引き寄せた。
「坂田くんの仕事のこと、何もわからないわたしだよ? 一緒にいたら、きっと出世運ダダ下がり。足引っ張っちゃう。坂田くんはもっと上を目指せる人なんだから、付き合う女性ももっとふさわしい――」
「美弥子」
苛立ったような声、そして挑むような眼差しに遮られて、ドキリとした。
「言ったはずだぞ? “出世なんてクソくらえ”だって」
「でもっ……飛鳥も言ってたよ。坂田くんは成績上げようといつも頑張ってるって。出世、したいんでしょう?」
「それは違う」
ばっさり否定され、意味がつかめず瞬くわたしの頬へ、彼の手が触れた。
伝わる温度に、絡む視線に。
逃げられないことを悟った心臓が、さらに大きく、狂ったように打っている。
「営業成績上げたくて必死になってることは否定しない。MVPを目指してるのも本当だ。でもそれは、出世したいからじゃない」
「……? だって、……」
成績アップ、イコール出世、でしょ?