イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

一瞬何が起こったのかわからなくて、頭が真っ白になる。
続いて、どっと押し寄せる痛み。

痛いのは、払われた手じゃなくて……

そこでようやく理解した。
わたしの予感は、気のせいなんかじゃなかったこと。

坂田くんは、意図的にわたしを避けてる――


「っ……悪いっ……」

彼が自分の手を引き寄せ、強く握り締めるのが見えた。

やっぱり、なんかおかしいよね。
いつもの彼じゃない。

言いようのない不安に駆られて覗き込むんだけど、伏せた眼差しからは何も読み取れない。
焦れたわたしは、一歩前へ。

「やっぱり今日、ブルームーンで待ってる。何時でもいいから来て? 話、したい」

「……無理だ。行けない」

感情を無理やり殺したような、潰れた声。
そして拳をポケットに突っ込んで、わたしの質問を遮るようにその長身はくるりと踵を返してしまう。

「待ってるから!」

追いすがる様に叫んだけど……とうとう、その背中は立ち止まらなかった。

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