イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「何かお腹に入れた方がいいよ」
労わるような声とともに、ほかほかと湯気の立つカルボナーラが目の前に置かれ、カウンターに乗せていた肘をビクッと離した。
「お代は後で、慎太郎に3倍にして請求しとく」
視線をあげると流さんがウィンクしてくれて、強張っていた頬が少し緩む。
「すみません。年末のお忙しいときに」
肩越しにブルームーンの店内を見渡せば、クリスマス間近なせいかカップル客を中心に盛況のようだ。
グラス一杯だけでクダ巻いてる客なんて、迷惑だよね。
腰を上げるべきかと逡巡したわたしを、流さんは訳知り顔に制した。
「全然構わないよ。美弥子ちゃん、どうしてるのかなって気になってたから、来てくれて嬉しいよ。慎太郎に聞いても、教えてくれないしね」
「坂田くん、こちらに来てるんですか?」
「ん? あぁ来てるよ。一昨日も来たかな」
「そうですか……」
わたしと会うヒマはないくせに、お酒を嗜む時間はあったってこと?
ちょっとムッとしながら座りなおし、「いただきます」とフォークを手に取った。