イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「中村はどうするんだ?」
「わたし? えーっと、坂田くんが帰るんなら、帰ろうかな」
言った途端。
スイッチを入れたみたいに、パッと切れ長の瞳が大きくなった。
「それ……誘ってる?」
掠れ気味にこぼれおちた言葉。
射抜くように注がれる視線。
でも、その時のわたしは、彼を止めることしか頭になくて。
自分に向けられたそれらをじっくり考えることもなく、こくこく頷いていた。
「そうそう、そうなの! よかったら一緒に帰らない?」
あぁよかった、2次会出席を阻止できそう!
そんな自己満足とともに胸をなでおろす。
よく見れば、彼の頬は上気して、ほんのり赤みを帯びてるみたい。
やっぱり平気そうに見えても、酔いが回ってるのかも。
思い切って声かけてよかった!
「意外、だったな。中村から、なんて」
ゆっくりと片手で口元を覆った彼が、ぼそりとつぶやく。
「え? 何?」
よく聞き取れなくて、返したんだけど――
「わかった、ちょっと待ってろ。すぐ戻る」と浮かれたみたいな声で言うなり、彼は店の中に戻ってしまう。
え? 何? 待ってろって……?
取り残されたわたしは、口をぽかんと開けたまま立ち尽くした。