イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

「ねえねえ、タバコ吸わないのー? ほんとに吸いたくならない?」

タクシーからふらりと降り立った女性は、坂田くんの腕を振り払い、よろめきながらこっちに近づいてくる。

悲鳴を上げそうになる口を、両手でぎゅうっと押さえた。

とろんと瞼の降りかかった目をした彼女は、こっちに全く気づかないまま、自販機のサンプルを真剣に覗き込んでる。


――年はアラサーくらいやな。うちらより少し上。色っぽい泣きボクロのべっぴんさん。なーんか世慣れた感じっちゅうか、余裕あって。

ホクロを探すまでもなく、すぐにわかった。
恵美が見たのは、彼女だって。


――会社勤め、って感じにも見えんかったっけど……、ホステスではないな。どっちかっていうと、フリーランス系?

確かに……と、彼女へさっと目を走らせる。
媚びたみたいな甘ったるい雰囲気はなく、むしろ反対だ。

面長な顔立ちに涼し気な目元、キリっとした濃いめの眉……
強めのパーマをかけたミディアムボブもおしゃれで。
知的なモノトーンコーデとも相まって、(酔っぱらってなければ)ザ・クールビューティーって感じだ。

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