イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「ったく、いい加減にしろ、それはドリンクの自販機。だいたい、オレはもう止めたって言っただろ。タバコはいらねえんだよ」
うんざりした口ぶりで坂田くんが言い、ぐいっと彼女の腕を引っ張るとそれを自分の肩へと回す。
そしてしっかりと抱えて、歩き出した。
「ふーん、そっかぁ、そうよねえ、止めた方がいいよねえ。そもそもさぁ、私があのジッポーあげなきゃ、慎太郎吸ってなかったもんねー」
半分寝言のようなつぶやきが聞こえて。
コートの上から、胸をギュッと鷲掴んだ。
『with love』
刻まれた刻印が、瞼の裏にありありと映し出された。
やっぱり。
あれは、あのライターは、彼女からのプレゼントだったんだ。
なんで忘れてたんだろう。
彼女の存在を。
これは……決定的だ。
嫌いなイベントでも我慢して、一緒に過ごすくらいだもん。
彼女が本命、なんだろう。
――マジでぇっ? 坂田さんがお見合いっ!?
――ほら昨日、部長に呼ばれてたじゃない? あの時ちらっと聞こえちゃったのよねー。
空っぽになった胸の内に、いくつかの言葉が響いたのはその時だ。