イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
……だから、トライアル、だったんだ。
態度がおかしくなったのは、予想外にもわたしが本気になっちゃったことに気づいて困ってた、ってとこだろう。
それで、『終わりにしなくちゃいけない』と思った。
バラバラだったすべてのピースがピタリと当てはまって、残酷な景色をわたしの前に晒す。
なんだ、そうだったんだ……。
“本気の恋愛はしない”男。
社内でささやかれた、意味深な噂。
みんな、勝手な持論を展開して。
そのどれも、彼は否定も肯定もしなかった。
その中に、あったじゃない。
人妻とつきあってるっていうのが。
そうか、つまり最初から答えは目の前にあったんだ。
火のない所に煙は立たない、そういうことだったのよ。
2人の姿が一緒にエントランスの向こうに消えてからも、長い間、わたしはその場から動けなかった。