イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

……だから、トライアル、だったんだ。


態度がおかしくなったのは、予想外にもわたしが本気になっちゃったことに気づいて困ってた、ってとこだろう。

それで、『終わりにしなくちゃいけない』と思った。


バラバラだったすべてのピースがピタリと当てはまって、残酷な景色をわたしの前に晒す。

なんだ、そうだったんだ……。


“本気の恋愛はしない”男。

社内でささやかれた、意味深な噂。

みんな、勝手な持論を展開して。
そのどれも、彼は否定も肯定もしなかった。

その中に、あったじゃない。
人妻とつきあってるっていうのが。

そうか、つまり最初から答えは目の前にあったんだ。
火のない所に煙は立たない、そういうことだったのよ。


2人の姿が一緒にエントランスの向こうに消えてからも、長い間、わたしはその場から動けなかった。

< 316 / 539 >

この作品をシェア

pagetop