イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
息を弾ませながら、ほんとにすぐ帰ってきた彼の手には彼のカバンと、見慣れた……わたしのカバン?
「行くぞ」
受け取りながら、ぽかんとしてしまう。
「へ?」
「帰るんだろ」
ニヤリ、片頬が上がるのが見えた。
妙に意味ありげに見えるのは、なぜ?
「うん、でもえっと、っ……お金、幹事に……」
何も言わずに出てきちゃっていいのかな。
参加費、まだ払ってないんだけど。
「オレが払っといた」
「えぇっ? あ、ありがとう……後で払うから――」
全部言わせず、彼の手がわたしの背に軽く触れる。
促されるまま歩き出して……あれ、と首をひねった。
そっちは、どう考えても駅とは逆のような気がする。
だって新宿だよ? 毎日通ってる駅でしょ?
彼って実は方向音痴?
「ね、ねえ坂田くん。駅、そっちじゃないよ?」
「知ってる」
そうだよね、足取りに全然迷いがないもんね。
ん?
じゃあどこに向かってるわけ?
「ど、どこに行くの?」
声が微妙に上ずってしまうのは、早い歩調のせいなのか、
それとも、彩るネオンの雰囲気がさっきまでとは違うせいなのか。