イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
……ダメだ、なんか落ち込んできた。
いかんいかん、と無理やり、彼女の愚痴(研修メンバーがしょぼくてつまらない、講師は現場をわかってない……etc.)に集中した。
「それにしても、ほんま! 一人は寂しかったわぁ。ありえへん、ほんま!」
ひとしきり話して満足したのか、彼女が次に怒りの矛先を向けたのはわたし。
ギロっとマスカラを盛った目で睨まれてしまい、ひたすら両手を合わせて謝った。
「だからごめんってば。こうしてご飯奢るって言ってるんだからもう許してよ」
理由は去年のイブのパーティー。
会場まで行きながら、ドタキャンしちゃったからな。
まぁ、あれはほんと、わたしが悪い。
今日はその罪滅ぼし、ってわけだ。
「それでさ、お店、恵美が予約してくれるって言ってたけど、こっちの方向でいいの?」
会社近く、ということ以外に何も知らされてなかったから尋ねると、隣では携帯を覗き込み何やら操作中。
「んーとな、スペイン料理なんやけど……あっちやな」
若干不安を覚えながら、彼女の道案内で歩くこと5分。
スペイン国旗を掲げた小ぢんまりとした店舗が見えて、ホッとした。
店内は、狭いながらずらりと並んだ酒樽がバルの雰囲気を盛り上げてて、20代くらいの会社員で賑わっている。