イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「いややわ、なんやのこれって、運命ちゃう!? なぁ!」
自分の前に座ったもう一人の男性――某省のキャリア公務員・黒部幸信さん――へ、恵美は興奮気味に同意を求めた。
その間も、ちゃんとチョリソやトルティージャをつつく手は止めないんだから、なんとも器用なもんだ。
皮肉っぽく眺めながら、イベリコハムをぱくっとかじった。
囃し立てられた河合さんは、というと。
「いやぁ、僕もそんな気がしてきましたよ」
とかなんとか、照れたように頭をかいてる。
いや、ただの偶然でしょう。
心の中のつぶやきは、場を壊さないため、恵美のため、ぐっと我慢した。
恵美が大喜びしているのは、わたしと彼――河合耕司さんが、実は初対面じゃなかったと判明したせい。
前に会ったことがあるらしいのだ。
そう言われて、東京都の公務員っていうプロフィールを聞かされて。
ようやく思い出した。
そういえば初めて行った婚活パーティーでプロフィールを交換して、その後1回だけ、近所で会った人がいたよね。あの人だって。
確かに……
偶然が重なってることは否定しないけど。
それが“運命だ”とか言われても、ピンとこない。
それとも案外、運命なんてみんなそんなものなんだろうか――