イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「そうかい? あー……、でも一緒に行くよ。会議室を見てこなきゃいけないし」
「会議室?」
延長使用の届けって出てたっけ? と思いつつ聞き返すと、小さな目が気まずそうに揺れた。
「ええと……、内緒なんだけどね。少しだけ使わせてくれって営業さんに頼まれちゃってさ。あぁほら、あんたの彼氏だよ。聞いてない?」
は? わたしの……彼氏? 営業?
一瞬の空白の後、「坂田、ですか?」と恐る恐る聞くと、「そうそう、彼彼!」って返ってくる。やっぱり。
「なんか仕事が大詰めだとかで、見逃してくれって、ねえ」
チラリとデスクの上に走った視線を辿ると、横倒しになったコンビニの袋から、缶コーヒーや菓子パンの包みが覗いてて……賄賂だな。あんにゃろう。
「でももう11時だし、いい加減消灯してくれって言わないと……」
ガシガシ、と困った様にスポーツ刈りの頭をかいてから、近藤さんははた、と動きを止めてこっちを凝視した。
「そうだ中村さん、あんたから伝えてもらえんかね? もう帰るようにって」
「え、えぇ? わたし、ですか?」
「そう、そうしよう、それがいい! こんなジジイに言われるより、恋人が来てくれたほうが喜ぶ」
「え、っと……いや、わたしたちは、別に……」
ぷるぷるこっちは全力で首を振ってるのに、全く彼の目には入っていないようだ。