イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
誘うって……
この展開って、まさか。
“そういうこと”に誘ったとか、思ってる!?
ようやく理解できた意思疎通不足に、ほとんど一瞬で全身青ざめた。
「ちょ、ちょっと待って、落ち着いて! 坂田くん、誤解なの!」
彼の腕から逃れようと、ワタワタみっともなく身体をよじるけど。
腰に絡みついてくる手は優しいくせに強引で、こっちの思惑を裏切ってちっともほどけない。
「無理だっつっただろ、結構今、ヤバい」
ヤバいって、ヤバいって、何が!?
この状況の方がヤバいでしょうよ!
こっちはもうパニックだ。
「待って、待って! ねえ、あの、早まっちゃダメだよ! 冷静になろう! こういうことは、時間をかけてゆっくり――」
「……ちょっと黙っとくか」
低い、唸るような声。
初めて聞く、男の声。
ぐいっと後頭部が引き寄せられ……
「なにすっ、――!?」
ブツって、言葉が強制的に遮断された。
鼻孔を刺激する、スモーキーな香りが瞬間的にぐっと濃くなって。
何が起こったのかわからなくて、見開いた視界。
映るのは、坂田くんの綺麗な顔のドアップだ。