イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
彼女によると、光莉ちゃんが言う“電話”は、事実らしい。
それは新年、仕事始めからほどなく始まったのだそうだ。
――ボイスチェンジャーで声変えてて、男か女かもわからないの。本人は心当たりないって言ってたけど、何らかのトラブルに巻き込まれてるのは、間違いないんじゃないかしら。
営業部の大方の意見は、光莉ちゃんと同じみたい。
彼にフラれた、過去の女の嫌がらせじゃないかって。
――それで、今どうなってるの? まさか、坂田くん辞めさせられたりしないよね?
――もちろんよ。反社勢力とつながってるなんて、ありえないしね。だから、こんなのただのイタズラで、みんなも気にしないようにって新条課長が言ってくれて、一応収まったんだけど……。
――けど?
先を促したわたしの耳に聞こえたのは、らしくもなく歯切れの悪い声だった。
――その後も電話が続いて。アシスタントの子たちが、ちょっと怖がっちゃってるの。電話取った子は特にね。それで、坂田のサポート嫌がって……。あいつもあいつで、気を使って全部自分でやるから大丈夫だって。
彼が営業部内で孤立してると聞いて、胸がギュッと痛くなった。
――全部? そんなの無理よ。リーズメディカルのプレゼン、もうすぐでしょ?
――確か、来週だったと思う。昨夜も私が帰る時、それ関連でまだまだ帰れないって言ってたし。最近はずっとそんな感じじゃないかな。