イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

ただただ狼狽えるわたしと、河合さんとを交互に見つめていた坂田くんは、やがて、わたしへと静かに視線を落ち着けた。

「お疲れ。昼休憩の帰り?」
「う、うん……」

ぎくしゃくと曖昧に頷くわたしから隣へ、彼は再び目を移す。

「はじめまして。中村さんの同期で、坂田と言います」
「あ、そうですか、同期の……。どうもはじめまして河合です」

坂田くんは……なんだかいつもより、不愛想だ。
冷たくすら見えるその雰囲気に押されたのか、河合さんはジリ、と後ずさる。

「あの、……自分、ここで失礼します。中村さん、また連絡します」

じゃ、と手を挙げるなり、返事も聞かずにくるり。
逃げるような足取りで駆け、どんどんその姿は小さくなってしまった。


「邪魔したか?」

再度ぶっきらぼうな声に問われて、ブンブンかぶりを振る。

「ううんっ、助かっちゃった。今の、この前話した合コンの相手なんだけど……ごめんなさいって言うの、難しいね」
苦笑いとともに、思わずぽろっと本音をこぼすと、彼が口元を緩めた。

「じゃないかと思った。顔が思いっきり、困ってたから」

一瞬そこだけクールに装った雰囲気が崩れ、以前と変わらない何かが覗いて……ドキッとしてしまう。

あぁダメだなぁ。
微笑み一つで、こんなに心を奪われちゃうなんて。
相当重症だ、と落ち込みながら――ふと思った。

……もしかして今のって、助けてくれた、のかな?

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