イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「さ、坂田くんっあのね、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
ちょうどいい。もろもろのこと、少しでも聞き出せないかな。
そう考えたわたしは、歩き出した彼の後を追って声をかけた。
何ができるのかわからないけど、
悩んでることがあるなら、少しでも力に……と思って……
「オレに話しかけるな」
え……
振り返った坂田くんは、立ち竦むわたしに気づいたのか、困った様に眉を下げる。
「何を聞きたいのか、予想はつく。もう耳に入ってんだろ、オレの噂。だったらわかるよな? 一緒にいると、お前まで反社って見なされるぞ」
行きかう人たちをチラリと確認するその眼差しの中に、気遣うような色を認めて。
あぁそうか……ってわかってしまった。
一人で作業をするのも、宇佐美さんたちやわたしと距離を取るのも。
きっとそれは、自分に関わらせないため。
トラブルに巻き込まないため。
もちろん、彼女をスキャンダルから守る意味もあるんだろうけど。
同時に、わたしたちのことも守ろうとしてくれてるんだ。
たった一人で、すべてを背負って。
きゅっと胸の奥が疼いて、拳を握った。
バカだよ、坂田くん。
そんな風に優しさ見せられて、黙っていられるわけないじゃない。
見て見ぬふり、できるわけないじゃない。
そして、足早にエントランスへ向かう後姿に誓った。
お節介、させてもらうからね坂田くん、と。