イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「そうとは限らないよ」
宇佐美さんが、やけにあっさり肩をすくめる。
「面倒見のいいあいつのことだから、例えば仲のいい友人とか幼馴染とかに、ピンチだから助けてくれって頼られたら、放っておけないだろうね」
仲のいい……友達、幼馴染……?
「でも、彼が大事にしてたライターって、彼女からのプレゼントなんです。“with love”って刻印の」
わたしが言うと、「あぁあのジッポーか」とすぐに通じた。
喫煙所で毎日見てたから、きっとよく知ってるよね。
「やっぱり特別な存在だと思います。それに、もし彼がわたしのこと本気で好きだったら、まずはトライアルで、なんて軽いノリで誘ったりします?」
きっぱり言い切ると、2人とも微妙な顔で黙り込んでしまった。
そもそも、どこをどうすれば、坂田くんがわたしにベタ惚れ、とかそういう発想がでてくるんだろう?
「うん、まぁ……大きな誤解があるとは思うけど。それはひとまず、置いておこうか。今はこっちの問題の方が切実だからね」
小さく吐息をついた宇佐美さんが、携帯を差し出す。
画面に映っていたのは、あのファックスだ。
そうだ。
坂田くんがトラブルに巻き込まれてることは間違いないわけだし、私情をごちゃごちゃ挟んでちゃいけない。
わたしはこくりと、頷いた。