イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

胸の内で叫んで、「はい」と冷や汗かきかき答えた。
すると。

「すみませんでした」

ペコリ、と頭を下げられてしまい、あっけにとられた。
「え?」

「デートに誘う前に、まず自分の気持ちを伝えるべきでした」

え? え? 気持ち??
通勤途中のサラリーマンが行きかう中で足を止め、一心に見つめてくる。
緊張してるっぽい様子に、こっちまでつられてドギマギしてしまう。

「正直に言います。初めて婚活パーティーで会った時から、いいなって思ってたんです。あなたのこと」

邪魔そうに避けながら、いろんな人がこっちをチラチラ見ていく。
もう居心地悪いったらない。
わたしは体を小さく縮めるようにして、羞恥心に耐えた。

「椎名さんが運命だって言ってたでしょう? 自分もそう思いました。あんなに何度も偶然に会うなんて」

「はぁ……」

そんなにまだ何度も会ってないと思うんだけど、とはもう口を挟めない雰囲気。

「もちろんまだ若輩者ですが、努力します。きっとあなたに相応しい相手になると誓います」

食事を承知した時点で、期待させてしまったのはわたしだ。
その後、坂田くん絡みの問題が持ち上がったからって、それは彼のせいじゃない。
だから、河合さんは悪くない。

でも……

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