イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
艶やかな声に呼ばれて振り返ると、爽やかな微笑を浮かべた宇佐美さんが、コートの裾を翻してやってくるところだった。
そこだけ一足早い春がやってきたかのような華やいだ雰囲気に、周囲のOLやサラリーマンたちが飲まれているのがわかる。
なんか……プリンスっていうより、もっと色っぽくて和装とか似合っちゃいそうな……そうだ、光源氏、って感じ!
ポン、とこっそり手を叩いてから、ペコリと頭を下げた。
「宇佐美さん、おはようございます。昨夜はごちそうさまでした」
「こちらこそ、ありがとう。ライン見たよ」
周囲の(特に女性たちの)興味深げな視線をできるだけ意識しないようにして、近づいてきた彼に並んで歩き出した。
話題は当然、タトゥーの男のこと。
宇佐美さんもまた、何らかの関係があるんじゃないかって意見だ。
「タトゥーっていうと、なんとなく裏社会の匂いがするよね」
「そうですよね」
「危険かもしれないから、今度会社近くとかで見かけたら、すぐに僕か日向に連絡して。いい?」
「はい」と従順に頷きながら、昨夜思いついた計画は内緒にしておこう、と心の中でつぶやく。言ったら反対されるに決まってるもの。
「――で、さっきの男は、何者かな?」
「へっ?」
ほんとに藪から棒に。
エントランスに入ったところで聞かれてしまい、一瞬言葉に詰まった。
どうやら河合さんと一緒にいるところ、見られてたらしい。