イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

「見てた?」

どういうこと? と首を傾げるわたしの肩を抱くようにして、宇佐美さんが導いたのはエントランスの喫煙スペースだ。

ガラスの壁を背にしてわたしを立たせて言う。

「ここからグランドフロアを見てごらん。何が見える?」

「何って……」

言われるまま目を動かせば、エントランスからセキュリティゲート、その先のエレベーターホールまでが視界に入る。

スマホを操作しながら、同僚と談笑しながら、音楽を聞きながら……ゲートに向かう人たちが一人一人、よくわかる。

あぁもちろん、あなたのファンもいますね。
わたし、めちゃくちゃ睨まれてますよ。
もういいですか?

早くこの場から逃げたいと若干泣きそうになりながら、「見ましたけど……これが何か?」と聞いた。

「よく見えるだろう? 入口からエレベーターまで、満遍なく」

「はぁ、そうですね……?」

何を言いたいんだろう、と見上げた先、漆黒の瞳へ意味ありげな色が浮かんだ。

「毎朝一緒に坂田とここでタバコを吸ってて……ある時気づいたんだ。あいつの視線が必ず特定の女子社員を追ってることにね」

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