イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「ハブられて、いい気味って」
「えっ?」
どういうことかと気になって、一番奥まで場所を移動。
数メートルの距離を置き、しゃがんでみた。
「何があったの?」
問いかけると、それを待ってたみたいに、ぽってりとした赤い唇が戦慄きながら開いた。
「ったし、じゃ……ないのに……坂田さん……っ」
大きな目からぽろっと一粒、涙が零れ落ち、何かに耐えるように、唇はまたきつく結ばれてしまったけど。
あたしじゃないのに――その言葉に、思い当たることがあった。
光莉ちゃん、話してたよね。
――まぁ、ほんとに反社と関係あるかどうかはわかりませんけどね。もしかしたら、今までフッてきた女の嫌がらせ、とかかもしれないし。
飛鳥も、営業部は大方そんな意見だって言ってたっけ。
もしかして……
「坂田くん宛ての嫌がらせ電話、犯人はあなただって、思われてるの?」
「………っ」
返事はなかったけど、間違いない。
彼女の目から、涙がどっとあふれ出したから。