イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
以前の資料紛失の一件は、新条課長が謝罪に来てくれたほどだし、営業部の全員が知るところだったはず。
もちろん、彼女の坂田くんへの想いは、大勢の人が気づいてただろうし……。
だとしたら、今回まず犯人としてみんなが同じ人物を頭に思い浮かべたとしても、不思議はない。
確かに最近、取り巻きだった女の子たちの傍に、姿が見えないなって思ったのよね――と考えつつ、彼女の隣に腰を下ろした。
「誰も信じてくれなくてっ……菜々美がやったんでしょって……あたし、何も知らないのにっ!」
一回りも二回りも細くなってしまった肩が、小さく震えてて……。
あの気の強い彼女がこんな風になるなんて。
きっと相当、針の筵の日々だったんだろう。
「ほら、綺麗なメイクが崩れちゃうよ」
そっと手持ちのタオルハンカチを渡したら、あっという間にぐしょ濡れになってしまった。
「あたしがいる時に、電話かかってきたこともあるんですよ? なのに、どうせ男に頼んだんでしょって、……っでも、ほんとに……何も、知らなくてっ……」
「うん、信じるよ。きっと犯人は、他にいる」
わたしが言うと、猫目がキッとさらに吊り上がった。
「適当なこといわないでください。あなたも、あたしがバカやったって思って笑ってるんでしょ」
「適当じゃないってば」
ダメージが大きすぎて、疑い深くなってるのかも。
毛を逆立てた猫みたいに睨まれてしまったわたしは、うーんと唸って、とっておきの情報を教えることにした。
「だってわたしね、犯人を知ってるの」