イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「……本気で言ってます?」
勢い込んで「もちろん!」と頷くわたしを、呆れたような目が見る。
「あたしが何したか、忘れたんですか?」
「忘れたわけじゃないけど……あんなことしなければよかった、って今は思ってるでしょ?」
大きな瞳が気まずそうに揺れるのを確認し、「それでいいよ」と口角を上げた。
わかってくれたなら、もういい。
「あたしがそのまま坂田さんと仲良くなって奪っちゃうとか、心配じゃないんですか?」
えぇ、そうくる?
「うーん、それは……心配はしてない。そもそも、無理っていうかさ」
曖昧に言って、言外に難しいよ、と匂わせた。
あんな綺麗な恋人がいるんだもん。
彼女が迫っても、なびかないと思う。
心の中で考えていたら、なぜか「へぇ」と目を見開く西谷さん。
「余裕ですね。なんか……すごい。羨ましい」
ん? 余裕?
そんなもの何もないけど……。
「あたしもいつか、そんな人と出会えるかなぁ」
「そ、そうだね……?」
クエスチョンがつくやり取りではあったけど、なぜか憑き物が落ちたみたいに、メイクがドロドロに崩れた顔を彼女が綻ばせていて。
まぁいっか、と思ったのだった。