イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
心なしか軽い足取りでドアの向こうへ消える西谷さんを見届けた後、わたしは作業を再開した。
なんとなく、さっきまでの重たい気分がいくらかマシになった気がする。
坂田くんの残業も、西谷さんのサポートでマシになるといいけどな。
「よいしょ」
段ボールの中からコピー用紙を取り出し、サイズごとに分けてしまう。
ここだけ西谷さんに手伝ってもらえばよかった、と後悔しながら、もう一度段ボールへ屈みこんだ。
そこへ。
カチャッ
ドアが開く音がした。
「あれ、西谷さん、何か忘れ物?」
深く考えることもなく、パタパタと入口近くまで移動して――……立ち竦む。
入ってきたのは……
「さかた、くん……?」
表情を隠すように目を伏せた彼の後ろで、ゆっくりとドアが閉まっていく。
そしてカチリと、かすかな音。
カギをかけたのだと気づいて、戸惑いが湧く。
「えっと、何か……用?」
声をかけると、ようやく切れ長の瞳がわたしを捕らえ……その冷ややかな光に、ゾクリとした。