イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

でもあの様子だと、もう忘れてるかもしれない。
あのキスも含めて、わたしとのことなんて記憶に残す価値もないだろうし……。

なんだ、悩むことなかった。

罪悪感を抱えてモヤモヤしていた自分がバカらしく思えてしまい、肩から力が抜けた。

「ねえねえ……坂田くん、こっち見てる気しない?」

梓沙さんが振り返り振り返り、そんなことをつぶやいていたけど。

まさか。
あるわけない。

笑いながら首を振ったわたしは、「気のせいですよ。行きましょう」って、梓沙さんを促した。

「そうかなぁ、なんか、ほんとにこっちをじっと……ねえ、中村さんのこと見てるんじゃない?」

いやいや、彼がわたしを気にするはずがない。
わたしなんて、その他大勢の一人で、道端の小石だ。

「ほら、遅刻しちゃいますよー」

カバンを探って社員証を取り出し、振り返らないままセキュリティゲートへ向かった。

< 41 / 539 >

この作品をシェア

pagetop