イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
が、コトはそう簡単に収まらなかった。
「えぇっお持ち帰りされたのっ中村さん!」
「しぃいっ! 声が大きいです、梓沙さん!」
白をベースにした広大なフロアの一角、総務課の自席に着いた途端。
いつもより早く出勤して、うずうず待っていたらしい光莉ちゃんに捕獲され――
「どうでしたっあの後!」とさっそく追及され。
梓沙さんにも、完全にバレてしまった。
「『中村のカバン、寄越して。オレが送ってくから』って、さらっと持って行っちゃって! 待ってた女共、何も言えなくて呆然としてましたよ! ほんといい気味だったぁ!」
嘘でしょ……まさかみんなに誤解されてる?
タラっと冷や汗が滑り落ちた。
「ちょっと! どうしてそれをさっき言ってくれなかったの!? ほら、やっぱり彼、中村さんのこと見てたのよっ!」
「え、え、なんですか? さっきって!?」
「うん、実はね、ほら喫煙ルームに毎朝いるでしょ、彼。それでね――」
向かい側の梓沙さんと、右隣の光莉ちゃん。
身を乗り出すようにして2人の間へ腕を伸ばし、「違いますからっ!」ってバシバシ遮った。
「先週は、たまたま2人とも帰るタイミングが重なっただけです! タクシーも別々だったし」