イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「今日はバレンタインですもんね」
そう言いながら、手にしていたオレンジ色のおしゃれな袋をヒラヒラ、わたしの目の前で振って見せる西谷さん。
「それも……坂田くんに?」
「もちろん、渡しますよ」
「……そっか」
反応に困りながらつぶやくと、プっと吹き出す声が聞こえた。
「心配しなくても、義理チョコですって。坂田さんが中村さん以外の女、相手にするわけないじゃないですか」
「え……いや、その、わたしたちは別に……」
どうも彼女は、大きく誤解してる気がする。
「中村さんは? 渡さないんですか?」
「呼んできましょうか」なんて言われてしまい、大慌てでブルブル首を横にした。
「いや、いいの! 大丈夫! そんなことしないで! チョコなんて渡すつもりないしっ」
そして、持っていた書類を彼女に突き出す。
「これ、記入漏れの箇所、付箋貼ってあるから、よろしく」
「え、はい、わかりましたけど……」
不満げに眉を寄せる彼女に手を振り、ジリジリと後ずさる。
それからぐるんと方向転換し、一気にダッシュした。