イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
すごい数のチョコだったなぁ。
過った寂しさを振り切る様にエレベーターホールまで全力で駆け、ちょうどポーンと小気味いい音と共に開いたドアに飛び込もうとして――
ドンッ!
降りてきた人とぶつかってしまった。
「すっすみませ――恵美!?」
「あれ、美弥子やん。お疲れー」
目を丸くしながら、くしゃっと笑ったのは恵美だった。
今日はヒョウ柄のワンピースにジブラ模様のカバン。
なんていうか……ワイルドだ。
「どうしたの? 研修終わって大阪帰ったはずじゃ……」
「んー実はな」
にまにま秘密めいた笑顔が、こっちにぐいっと近づいて、同じだけのけぞってしまった。
「黒部さんと付き合うことになってん」
「えっあのエリート公務員と!?」
声をあげると、“ニマニマ”が一層深くなった。
「んで、今日バレンタインやろ? 彼、早退してデートしてくれるって言うから有給取ったんやけど、まだ終わらんらしいわ。せやから暇つぶしにこっち、顔だしてみてん」
「はぁなるほど」
バレンタインデートで有給。
それでいいのか、社会人。……相変わらずマイペースだなぁ。