イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

でも彼女はちっとも気づいてないようで、得意満面。
ツッコむのも可哀そうになってしまい、そっとスルーしておくことにする。

「なぁなぁ、ええやん河合さん! あのな、黒部さんに聞いたんやけど、あの人田園調布に住んどるボンボンらしいで!」

えぇ? 田園調布?
「そんな話、全然聞いたことないけど」

「謙遜しとんのとちゃう? ええ人やんっ! 玉の輿のチャンスかもしれんで? ちゃんと捕まえとき!」

バンって勢いよく背中を叩かれてむせそうになりながら、何を言っても無駄だな、と口を噤むことにした。


◇◇◇◇

いい笑顔だな、坂田くん。
わたしが大好きな、あの笑顔……。

ブルームーンの片隅、テーブル席。
もはやわたしの定位置、とも言うべき場所で頬杖をつき、しんみりと見つめてしまうのは携帯。
画面に映っているのは、さっき飛鳥から届いたラインだ。

【ただ今、絶賛祝勝会中~! 主役は今年度MVPの坂田様だぞ! 新条課長のおごりよ~ん】

メッセージをスクロールすると、酔っぱらってるらしい飛鳥と坂田くんのツーショット写真が現れる。
背後は居酒屋らしいお座敷で、他にもたくさんの人が映りこんでる。
営業部全員行ってるんじゃない? 新条課長って太っ腹だなぁ。

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