イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「流さん」
お邪魔してます、と頭を下げると、その大柄な身体に似合わない滑らかな動きで、流さんはわたしの前へプリンアラモードを置いた。
「えっと……わたし、オーダーしてな――」
「僕からのプレゼント。バレンタインだからね。欧米では、男からっていうのが普通らしいよ?」
優しい言葉に、もしかして可哀そうとか思われたのかなって自虐的に考えてしまったけど、まぁそれも仕方ないよね。
店内を見渡せば、カップルばっかりだもん。
明らかにわたしは、イタイ女。
ここはありがたく受け取っておこう。
「じゃあ、いただきます。ありがとうございます」
ぺこりとまた頭を下げると、流さんは「ごゆっくり」と踵を返しかける。
とっさに、「あのっ!」って声をかけていた。
「ん?」
「ええと……変な事聞いてごめんなさい。でももしかして何か、ご存知だったらと思って。坂田くんのこと。トラブルを抱えてる、とかそんな……」
通い始めてわかったのは、流さんは毎日お店にいるわけじゃないってこと。
むしろ会える方が珍しいくらい。
貴重なチャンスに、少しでも手掛かりが欲しくて口にしかけたんだけど。
なぜか複雑そうな表情で見下ろされてしまい、言葉を切った。
え? 何?
促すように覗き込むと……小さなため息?
「あいつが悩んでるのは、君のことだよ」