イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「えぇ、ほんとですかぁ?」
光莉ちゃん、その顔は全然信じてないって風だな。
「ほんともほんと! 事実です!」
「でもあたし、あの後営業部の人に聞いたんですけど、坂田さんが1次会で切り上げるのって初めてだそうですよ? それって、やっぱり先輩が原因って考えるのが普通ですよね?」
「まさか、そんな――」
「ねえねえ、さっき彼、中村さんに何か話があったんじゃない? だって、ほんとになんか、切ない、みたいな目で見つめてたもの、中村さんのこと」
「キャーほんとにっ? もしかして、我が総務にあの坂田さんを落とす女子がっ!」
「ちょちょ、声大きすぎ! 伊藤課長がこっち見てるっ」
ちょうど目が合ってしまった課長の名前を出すと、さすがに騒いでいた2人もおとなしくなってくれて、やれやれだ。
まだ物足りなそうな視線を感じるけど、そこは断固スルー。
坂田くんがこっちを気にしてたっていうなら……
ぶっちゃったことを怒ってる可能性はあるな。うん、大いにある。
こんにゃろ、あのクソ女、とか?
うわぁ……やっぱり変な噂が立つ前に、さっさと謝っちゃわないと。
この穏やかな環境を波立たせたくない。
整然とした快適なオフィスを見渡したわたしは、よし、と頷いて、パソコン画面へ集中した。