イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
20. 脅迫者
『中村さん? 聞こえてる? 返事して! どうかしたの?』
宇佐美さんの声が遠ざかっていく。
後ろから伸びてきた手に、携帯が奪われてしまったから。
プツ、っと、声が途切れ。
通話が強制的に切られるのがわかった。
「か、河合、さん……」
「バレンタインまでには、連絡があるかもと思ったんだけど。押してダメなら引いてみろって言われて。でも、時間の無駄でしたね。これ以上待てなくなったから、来てしまいました」
「さぁ、入って」と押されるようにして、玄関の中へ追いやられた。
その人の背後で閉まるドアを呆然と眺めながら、ジリジリと後ずさる。
「きゃあっ」
三和土のわずかな段差に躓いて、ガタンってひっくり返る様にしりもちをついた。
目線をあげていき、そこにあった能面のような顔に愕然とする。
この人、こんな顔してたっけ?
「あなたが……あんな写真撮ったんですか? 会社に、嫌がらせの電話をかけたのも、ファックスも……? どうしてこんな……」