イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
この人、わたしを助けてくれた、のよね?
でもどうして?
どうして突然、彼がこんなところに現れるの?
彼は一体何者……?
ぐるぐると悩み、迷うわたしの様子に、なぜか彼は納得したように頷き、その手をひっこめた。
「なるほど、おれじゃダメってこと」
「いえっその、ダメ、っていうか……どうしてあなたがここに……って、不思議で……」
そもそも、彼はわたしのこと知らないはずよね?
戸惑いつつ首を傾げたら、「あぁそっか、自己紹介がまだか」と、相手がふんわりと眦を緩めた。
すると、氷のように冷たかった雰囲気がガラッと柔らかいものに――幼いとも言えるものへ変わる。
まるで別人のような変化に、え? って、二度見しちゃったくらい。
そうこうするうちに、彼はごそごそズボンの後ろポケットを探って財布を出し、さらにその中から何かを取り出そうとしてる。カードのような……?
なんだろう、と思いながらふと顔をあげ。
「きゃああっっ!!!」
声の限りに、叫んでいた。
タトゥーの男越し、ナイフを振りかざした河合さんが見えたから――