イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

どうして?
どうして坂田くんがここにいるの?

自分の目が信じられなくて、もう唖然とするしかなくて……


「あー……悪い、美弥子。弁償するから許して」

「……へっ?」

気まずそうな声音で、ようやく我に返った。
そして、よくよく状況を確認してみれば。

「えええっ!?」

か、壁に、ああ穴っ!? 穴が開いてて……その下に河合さんがうずくまって、白目をむいてる!

もしかして、さっきのって、壁を突き破った音!?

「さっすが兄貴! これぞ壁ドン男バージョン、だな」

タトゥーの男が、おどけた様にパチパチ手を叩いてる。

ん? 兄貴??

「ふざけたこと言ってんな。おい、大丈夫か。お前には当ててないんだけど?」

坂田くんは呆れたように肩をすくめ、気を失ってる河合さんを揺する。
わずかなうめき声を確認すると、「よし」と頷き、トレンチコートのベルトを引き抜いて――手際よく両手を縛り上げてしまった。

「おいエージ、交代」

「了解」答えたタトゥーの男がわたしから離れ、狭い廊下で坂田くんとすれ違って――……

< 455 / 539 >

この作品をシェア

pagetop