イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
どうして?
どうして坂田くんがここにいるの?
自分の目が信じられなくて、もう唖然とするしかなくて……
「あー……悪い、美弥子。弁償するから許して」
「……へっ?」
気まずそうな声音で、ようやく我に返った。
そして、よくよく状況を確認してみれば。
「えええっ!?」
か、壁に、ああ穴っ!? 穴が開いてて……その下に河合さんがうずくまって、白目をむいてる!
もしかして、さっきのって、壁を突き破った音!?
「さっすが兄貴! これぞ壁ドン男バージョン、だな」
タトゥーの男が、おどけた様にパチパチ手を叩いてる。
ん? 兄貴??
「ふざけたこと言ってんな。おい、大丈夫か。お前には当ててないんだけど?」
坂田くんは呆れたように肩をすくめ、気を失ってる河合さんを揺する。
わずかなうめき声を確認すると、「よし」と頷き、トレンチコートのベルトを引き抜いて――手際よく両手を縛り上げてしまった。
「おいエージ、交代」
「了解」答えたタトゥーの男がわたしから離れ、狭い廊下で坂田くんとすれ違って――……